新潮文庫紅白本合戦第1位【豆の上で眠る 湊かなえ著】を読んだ感想 優しい嘘なんてない(ネタバレあり)
久しぶりに読書をしました。
読んだのは、著者 湊かなえ『豆の上で眠る』
音楽に例えると『ラフマニノフの鐘』
暗くさまよってる感じだけど、真実が見えたようなやっぱりわからないような、行き場のない気持ちかな。
あらすじ
小学校一年生の時、結衣子(ゆいこ)の二歳上の姉・万佑子(まゆこ)が失踪した。
スーパーに残された帽子、不審な白い車の目撃証言、そして変質者の噂。
必死に捜す結衣子たちの前に、二年後、姉を名乗る見知らぬ少女が帰ってきた。
喜ぶ家族の中で自分だけが、大学生になった今も微かな違和感を抱き続けている。
お姉ちゃん、本当に万佑子ちゃんなの?あなたは本物なの?
辿り着いた真実とは。衝撃の姉妹ミステリー。
『豆の上で眠る』を読んだ感想(ネタバレあり)
血が大事?それとも育ちが大事?
よくドラマや小説、映画などで出生時に取り違えられて知らぬまま育て、その後本当の子供を引き取る話ありますよね。
DNAは我が子なのに、育った環境で全くの赤の他人に思える。
今まで育ててた他人の子にも愛着があり、離れたくない。
そんな出来事を親目線ではなく、妹の結衣子目線で描かれてるのが面白いな〜と思いました。
母が万佑子を探したい一心で、結衣子をダシに使う。
同級生に白い目で見られても結衣子は姉探しに協力する。
結衣子って小学校低学年なのにすごく大人なんです。
私は大人の顔色を伺うよな小学生じゃなかったので、とても結衣子が大人びて見えます。
でも、こういう子ってすごく生きにくいと思う。
結衣子目線だからってのもあるかもしれませんが、結衣子が一番の被害者じゃないでしょうか。
家族は結衣子に嘘をつきました。
結衣子のみならず、おばあちゃんにもおじいちゃんにも本当のことを言わなかったのかもしれないけど、一緒に生活してる者とそうじゃない者だと全然違いますよね。
『噓も方便』なんて言葉もあるけど、これは嘘だと完全にバレてない時だけ優しい嘘となり許されるのではないでしょうか?
結衣子はバリバリ、万佑子に疑念を抱いてました。
両親は結衣子のためを思ってしたことかもしれませんが、それが結衣子の性格まで形成してしまう。
小説の中にこんな文面があります。
昔の貧乏な画家は新しいカンバスを買う余裕がなく、絵が描かれているものを塗りつぶし、その上から新しい絵を描いていた。まれに、何層かのつまらない絵の下に名画が眠ってることもあるのだと。
人間の記憶もそのカンバスのように、重ね書きの繰り返しではないだろうか。薄っぺらな日常が何年分も重ね書きされようと、ほんのわずかな亀裂や隙間から、色濃く残ってる部分が漏れ出てくるのは、なんら不思議なことではない。
嘘って、うまくつけたと本人は思ってても、時を経て少しづつ漏れ出すことがある。
嘘をつかれた方は『あれ?なんかおかしいな』と疑念を持つ。
嘘という証拠もないから深追いはしないけど、その嘘の綻びは必ずといっていいほど現れる。
嘘を疑ってる相手に真実をいうのは勇気の要ることだけど、バレた時は関係性すら危ぶまれる。
嘘をつく人は、私のことを軽んじてるんだと思ってます。
優しい嘘はこちらが疑ってる瞬間から存在しないのだから、真実を言って欲しい。
こちらも言いやすいように誘導してるのに、頑なに嘘をつき通そうとする。
こういう相手は真の関係を築けないと諦めます。
過去に好きな男性に嘘をつかれて、とても苦しかったことがあります。
その人とはそれまでの関係だったんだと、関係が終わってハッキリと気づきました。
彼が言いたくないのに無理に聞き出す必要はない。
彼が私を想ってくれる気持ちは信じられるのだから、それを信じたらいいとその時は思いました。
でも、やっぱり嘘つきは一生嘘つきです。
その後も嘘をつかれました。
一度ついた嘘を取り繕う嘘だったのかもしれない。
そうかもしれないけど、何もかもが嘘に思えたし、彼にとって私は何者でもないのだと虚しくもなりました。
私は彼の思い描く理想像に付き合う存在でしかなかったのです。
はたまた詐欺師だったのかもしれません。
幸い金品を取られるような被害はありませんでした。
同性であれ異性であれ、信頼関係が一度崩れたら終わり。
優しい嘘なんてない。
最初っから、嘘をつかなきゃいけないことをしなければいい。
嘘をついてたことを許してくれない彼女だと思われてた私にも、責任はあるのかもしれませんね。
嘘をつかせる方も、嘘をつく方もどっちもどっちなのかもしれない。
どちらにせよこんな関係、本物の関係ではない。
偽物を切り捨てられた時に本物がやってくる。
出会いに断捨離は必要だよね。
気になった方はぜひ読んでみて^ ^